パートナーがASD(自閉スペクトラム症)やADHD(注意欠如・多動症)などの発達障害を持っている場合、物事への捉え方や感情の表現方法、生活のリズムに大きな差が生じることがあります。例えば、ASDの特性には相手の気持ちを読み取るのが苦手、曖昧な表現を理解しにくいといった傾向があり、些細な会話でもズレが生まれがちです。これにより、話がかみ合わず、相手に悪意はなくても無関心、冷たいと誤解されることがあります。
一方、ADHDの特性としては注意が散漫で約束を忘れやすい、時間の見通しが立てにくい、衝動的に発言・行動してしまうなどが挙げられます。これにより、パートナーからすると話を聞いていない、計画を守れないと感じ、信頼関係に亀裂が入ることもあります。
このような繰り返されるコミュニケーションの衝突は、パートナーの片方に自分ばかりが我慢している、心が疲れたといった強い孤独感や閉塞感を抱かせ、やがてはカサンドラ症候群に陥るリスクもはらんでいます。カサンドラ症候群とは、発達障害のあるパートナーとの関係性において、自分の感情や不満を理解してもらえず、精神的に追い詰められる状態を指します。
次に問題になるのが、価値観のズレです。たとえば、家事の分担や金銭感覚、子育て方針など、夫婦間で一致しておきたい部分においても、発達障害の特性が影響し、本人の中では合理的な行動であっても、パートナーにとっては理解できないことがあります。たとえば、予定を急に変更された際にパニックを起こす、感情的な表現が極端で理解しづらいなど、一般的な感覚では説明できない状況が日常的に起こります。
また、発達障害の特性として自分の興味があることには集中できるが、関心のないことには極端に注意が向かないという傾向があり、夫婦の会話や家庭内の協力に支障が出る場合もあります。こうした違いは、やがて話が通じない、価値観が合わないといった感情に直結し、精神的な距離を生んでしまうのです。
以下は、発達障害の特性によって起こりやすい夫婦間のすれ違いとその原因を整理した一覧です。
| 発達障害の特性 |
起こりやすいすれ違いの例 |
パートナー側の捉え方 |
| 曖昧な言葉を理解しづらい |
気遣いのない返答になる |
話を聞いてくれないと感じる |
| 興味のないことに集中できない |
家事や育児への無関心 |
自分だけが負担している感覚 |
| 衝動的な言動が多い |
思いつきで予定変更 |
振り回されて疲れる感覚 |
| 自己中心的に見える言動 |
会話が一方的になる |
理解されていないと感じる |
このように、発達障害によるすれ違いは、特性を知らなければ人間性の問題だと誤解されてしまいがちです。しかし実際は、特性による脳の情報処理の違いによって生じているものであり、対応の工夫によって改善できる可能性があります。
夫婦の関係を壊さないためには、まず違いを正しく理解し、対話を重ねることが何より重要です。そして、必要に応じて公認心理師や臨床心理士といった専門のカウンセラーに相談することで、感情の交通整理や解決への糸口を見つけることができます。理解と支援があれば、たとえ発達障害という違いがあったとしても、ふたりに合った関係性を築いていくことは可能です。